2023/01/12 Category:

イェリネク戯曲連続上演関連記事まとめリリース!

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いよいよ来月16日に開幕が迫った地点の新作『騒音。見ているのに見えない。見えなくても見ている!』。現在、創作は佳境を迎えています。ベルギーからは衣装デザイナーのコレット・ウシャールが来日。舞台美術や音楽のプランも具体的になってきました。

 
木津潤平が手がける空間デザインは、舞台上に反射鏡ともシャーレとも思しき鏡ばりの皿舞台を配置。バランスボールの上に置かれた皿舞台は6名の俳優の動きにより全方向に傾斜します。俳優は「ウイルス」「マスク」「ワクチン」と名付けられた三つの状態(身振りとお囃子)を演算によって常に変化させながら、客席に語りかけます。数多の噂と陰謀論、それによって引き起こされる分断を描きながら、人類が普遍的に抱えてきた「病」に切り込みます。複数の声が重なり合うことが常態化した舞台は、これまで以上に摩訶不思議かつ目の離せないものとなること間違いありません。
 
音楽監督の三輪眞弘は、自ら提唱した「4ビットガムラン」の形式を用いた新曲を準備。『愛の賛歌』(2007)以降、ガムランを用いた音楽をつくることは氏のライフワークのひとつ。演奏はジャワガムランアンサンブル・マルガサリ(出演:大井卓也、谷口かんな)が担当。映像を用い、この世のものともあの世のものとも判然としない演奏形態を探ります。俳優が踏む三種類のステップが刻むリズムや彼らが発声する言葉との化学反応、また「見えること」と「聞こえること」の相互関係により、目まぐるしく変容する4ビットの音世界をぜひ劇場で体感してください。
 
公演は2月16日〜23日、横浜のKAAT神奈川芸術劇場にて。尚、本作は12月に上演された『ノー・ライト』とともに、〈地点によるイェリネク戯曲連続上演〉というプロジェクトの一環で上演されますが、前作『ノー・ライト』の批評やクリエイションの様子などのまとめサイトをこのほどリリースいたしました。
https://note.com/beyondchiten/n/n629c1b292640
 
観劇のお供としてお楽しみいただければ幸いです。皆様のご来場を劇場にてお待ちしております。
 
 
エルフリーデ・イェリネク Elfriede Jelinek
詩人、小説家、劇作家。1946年オーストリア生まれ。ビューヒナー賞をはじめ数々の賞を受賞。小説『ピアニスト』(1983)は2001年にミヒャエル・ハネケによって映画化され、同年カンヌ映画祭でグランプリを受賞した。2004年、「豊かな音楽性を持つ多声的な表現で描いた小説や戯曲により社会の陳腐さや抑圧が生む不条理を暴いた」功績により、ノーベル文学賞を受賞。
 
三浦基 Motoi Miura
地点代表、演出家。1973年生まれ。2007年チェーホフ作『桜の園』で文化庁芸術祭新人賞受賞。2017年イプセン作『ヘッダ・ガブラー』で読売演劇大賞選考委員特別賞受賞。その他、京都市芸術新人賞など受賞多数。2012年にはロンドン・グローブ座からの招聘でシェイクスピア作『コリオレイナス』を上演するなど海外でも高く評価されている。著書に、『おもしろければOKか? 現代演劇考』(五柳書院)、『やっぱり悲劇だった「わからない」演劇へのオマージュ』(岩波書店)。
 
三輪眞弘 Masahiro Miwa
作曲家。1958年東京生まれ。1980年代後半からコンピューターを用いたアルゴリズミック・コンポジションと呼ばれる手法で数多くの作品を発表。音楽についての独自の方法論「逆シミュレーション音楽」で2007年アルスエレクトロニカ、デジタル・ミュージック部門グランプリ(ゴールデン・ニカ)、2010年芸術選奨文部科学大臣賞、2020年サントリー音楽賞などを受賞。旧「方法主義」同人。人工音声歌唱ユニット「フォルマント兄弟」の兄。情報科学芸術大学院大学(IAMAS)教授。
 
木津潤平 Junpei Kiz
1969年愛知県生まれ。建築家。東京大学で香山壽夫氏に師事。米国建築家協会Japan Design Award大賞、英国Archtectual Review Awardsなど受賞。舞台の空間デザインにSPAC『マハーバーラタ』『アンティゴネ』(仏アヴィニョン演劇祭招待作品)、現代オペラ『浜辺のアインシュタイン』(神奈川県民ホール)など。地点のアトリエ「アンダースロー」、アンダースローの食堂「タッパウェイ」の設計も手がける。